白山周辺(岐阜/福井) よも太郎山(1581m)、願教寺山(1690.9m)、銚子ヶ峰(1810.4m) 2021年4月10日  カウント:画像読み出し不能

所要時間 4:46 駐車場(林道起点)−−6:11 白山登山口−−6:41 橋−−8:21 よも太郎山 8:38−−8:45 1450m鞍部−−9:40 願教寺山−−9:56 1670m峰−−10:58 銚子ヶ峰 11:21−−11:43 避難小屋−−12:29 大杉−−12:34 白山登山口 13:10−−14:22 駐車場(林道起点)

場所岐阜県郡上市/福井県大野市
年月日2021年4月10日 日帰り
天候快晴
山行種類残雪期の籔山
交通手段マイカー
駐車場白山中居神社周辺や林道沿いに駐車余地あり
登山道の有無林道〜銚子ヶ峰以外は登山道無し
籔の有無雪が無い場所は主に笹や根曲がり竹だが、藪が出ていたのは数mが2箇所と200mほどが1箇所のみ
危険個所の有無無し
山頂の展望いずれの山頂も立木皆無で360度の大展望
GPSトラックログ
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コメント雪が消えてしまう前に白山南部の藪山を周回。先週より雪解けが進み林道で雪の上を歩くのは全体の10%未満。廃林道からよも太郎山への沢沿いのルートの残雪状況が不明で最初から躓く可能性があったが、橋を渡って左岸のまま歩くことができた。沢を離れてからはずっと雪の上を歩く。稜線上では銚子ヶ峰から野伏ヶ岳へ縦走するハイカー2名とすれ違った。久しぶりの冷え込みで雪質は最高で持って行ったワカンの出番は無し。北風がややあったが天気は最高の部類。帽子を被っていたにもかかわらず雪の反射で今シーズン初めて顔が日焼けした




車止めから出発 先週は雪の上を歩いたここも林道縁を歩けた
気温は-8℃! 先週下ってきた初河谷の林道
先人の形跡。少なくとも2名 白山登山口の東屋
白山登山口。先人の足跡はこちらへ 廃林道を直進
砂防ダム群 スキー跡。たぶん昨日のもの
石徹白川にかかる橋。廃道だが健在 ただし橋を渡ると道は消失。沢に出てしまう。右の木で左岸へ渡る
1つだけ見かけた目印 ここだけの通過にアイゼン着用
標高1150m付近。最初の大きな沢を横断 川岸から台地状へ上がる
標高1170m付近。本当はこの沢を遡上するのが正解 気付かず沢を渡って直進。方位がおかしく間違いに気付く
右手の斜面を登って北側の沢へ 目的の谷だと思っていたが一本南側の谷だった(気付かず)
標高1280m付近 標高1330m付近
ルートミスに気付き標高1400m付近でトラバース 標高1430m付近。トラバース中
標高1430m付近から見た丸山、芦倉山 標高1450m付近から見た銚子ヶ峰
標高1450m付近から見た1510m鞍部 標高1470m付近から見た1510m鞍部
標高1470m付近から見た北東側 標高1480m付近。鞍部に行かず直接山頂へ向かう
1669m峰 標高1550m肩から見たよも太郎山
よも太郎山山頂 よも太郎山から見た1669m峰
よも太郎山山頂からの360度パノラマ展望写真(クリックで拡大)
よも太郎山から1450m鞍部への下り。1箇所雪が切れている 標高1550m付近で根曲がり竹藪を突破
標高1490mから見た願教寺山への藪回避ルート。 1450m鞍部から南東を見ている
1450m鞍部付近の積雪は1m程度 僅かな残雪の帯を伝う
2箇所ほど短い藪を突っ切る 藪を抜け尾根南側に出ると残雪帯
野伏ヶ岳に向かう単独男性とすれ違う 標高1560m付近。藪が出た稜線を避けて東側を登る
標高1660m付近で藪を突っ切る すぐに次の残雪へ乗る
よも太郎山方面を振り返る 願教寺山山頂
願教寺山山頂からの360度パノラマ展望写真(クリックで拡大)
すれ違った男性はよも太郎山への登りにかかっていた 願教寺山から見た1670m峰
1670m峰から願教寺山へ向かう男性 尾根が屈曲する1650m峰周辺は藪が出ている
1650m鞍部から藪に突入。でも意外と薄い 1650m峰のすぐ先で尾根南の残雪帯へ
銚子ヶ峰まで藪はない 願教寺山を振り返る。すれ違えなかった男性を発見
尾根北側を迂回する男性。でもこれは失敗ルート
1670m峰からの360度パノラマ展望写真(クリックで拡大)
1670m峰から見た銚子ヶ峰 標高1600m付近。広大な斜面
標高1700m付近から見た東側。ここで進路変更して直接銚子ヶ峰へ向かうことに
標高1730m付近から見た願教寺山〜野伏ヶ岳
1800m峰を巻いている最中 1770m鞍部より僅かに南で稜線に出る予定
稜線に出て北を見ている
銚子ヶ峰北側の1800m肩 1800m肩から見た銚子ヶ峰
銚子ヶ峰山頂。三角点はおそらく足元の雪の下
銚子ヶ峰山頂からの360度パノラマ展望写真(クリックで拡大)
銚子ヶ峰山頂から見た槍穂と笠ヶ岳
銚子ヶ峰山頂から見た立山、剱岳、薬師岳
銚子ヶ峰山頂から見た木曾御嶽 銚子ヶ峰山頂から見た乗鞍岳
銚子ヶ峰から下山開始 所々夏道が出ている
1748m峰から見た銚子ヶ峰、別山
下りのルート(夏道)
標高1700m付近 標高1600m付近で丸山へ続く主稜線と分かれる
避難小屋。雪は消えていた 積雪前なら使用OK? よくわからん
先週ガスの中を下った尾根。かなり藪が出ているように見えた 標高1480m付近。一時的に雪が消える
標高1360m付近から見た丸山〜初河山の尾根。北斜面は白いが尾根上や南側は雪は少ない
標高1300m付近 標高1200m付近
標高1080m付近 特別天然記念物 石徹白の大杉
大杉以降は石畳の道が続くが大半は雪の下 登山口
登山口の水場 乾いた路面で最後の休憩
林道脇にはフキノトウ多数あり 初河山から下った尾根。やっぱ雪が無い
雪がある部分もほとんどが道路縁を歩けた 林道入口
橋付近の駐車場。ただし多くの登山者は神社の駐車場を利用 橋から見た野伏ヶ岳


・石徹白川源流部の山で未踏は、よも太郎山、願教寺山、銚子ヶ峰の3山となった。銚子ヶ峰は夏道があるのでいつでも登ることができるが、残り2山は道が無く深い藪が予想されるため一般的には雪がある時期にしか登られない。先週の芦倉山〜丸山周回で標高1200m以下は雪が消えていることが分かり、できるだけ早く出かけた方が得策だと判断した。ただ心配なのは胸の痛み。今週、通勤途中に自転車で車止めに突っ込んでぶつけたもので、右目の視力低下の影響がこんな形で表れている。くしゃみや咳、鼻をかんだりあくびをしても痛むほどで、ザックが背負えるか少々心配だった。実際には全く痛まないわけではなかったが行動に支障はなかった。ちなみにこの記録を書いている今でも痛みが引かない。もしかしたら肋骨にひびが入ったかもしれないなぁ。ちなみに私は骨折の経験はない。

・この3山を登る場合、一般的には銚子ヶ峰〜野伏ヶ岳まで縦走することになる。これは石徹白川が渡渉できない水量だからである。林道はずっと石徹白川左岸にあるので、右岸側に位置する願教寺山以西の山々は途中から降りても石徹白川を渡って林道に出られない。林道に出られるのは橋がある野伏ヶ岳につながる林道だけである。もちろん雪に埋もれる上流部なら渡れるだろうが、それが通用するのは願教寺山付近だけであろう。

・しかし1つだけ抜け道がある。石徹白川沿いの林道にある白山登山口を過ぎて続く廃林道の途中、標高1090m付近に石徹白川を渡る橋があるのだ。地形図によるとその先に破線が続いているが、おそらく廃林道だろう。ネットで記録を見るとこの橋は今でも落ちずにかかっているとのことで、これを利用すれば沢沿いに進んでよも太郎山に直接登れそうだ。これなら銚子ヶ峰〜野伏ヶ岳を縦走するより格段に体力消耗を減らせる。

・問題はこの橋から北西に延びる沢の渡渉が可能かどうか。石徹白川本流以外は雪に埋もれているのなら問題ないが、4月のこの時期のこの標高では先週の経験からして流れが出ているは確実だろう。渡れない場合は左岸に沿って上流に向かうことになるが、地形図ではこの岸は橋の近くでは尾根が張り出して崖マークが連続しており、へつることができない岩壁を流れが直接洗っている可能性がある。また、崖があるということは岸を通過できない場合に高巻できないことを意味する。理想はこの沢に1か所でもスノーブリッジがあって右岸へ渡れることだが、年によって残雪状況は大きく変化するのでこればかりは現地に行ってみないと分らない。

・今回のルートでは右回り、つまり最初によも太郎山に登るか、それとも左回りで銚子ヶ峰に先に登るかの選択がある。野伏ヶ岳まで縦走するなら標高が高い銚子ヶ峰にまず登るのが常識的判断だが、沢を絡めるとなると事情が異なる。気温が上昇する日中に沢沿いを歩くと雪解けが進んで水量が増加し、渡ったり歩ける場所が減る可能性があるのだ。早朝の気温が低い時間帯の方が雪解け水の量が少ないのは確実で、最初に銚子ヶ峰に登るのではなく逆回りとして、最初に廃林道を上がって橋を渡り、沢沿いを登って1510m鞍部からよも太郎山に登り、銚子ヶ峰へと歩くのが成功確率を上げるためのルートであろう。もちろん、この方向にしたからと言って必ず沢沿いのルートを遡上できるとは限らない。その場合は本流の廃林道をさらに遡上して願教寺山に登り、よも太郎山を往復して銚子ヶ峰を越えて林道に下ることになるだろう。どちらにしても林道歩きが長くて日帰りとしては距離が長くなりそうで、所要時間は10〜12時間を見込んで食糧、水は多く持つことにした。時間と体力消耗は雪質が大きく関わるので、できるだけ気温が低くて雪が締まっていることが望ましいが、うまい具合に寒気が入って土曜は冷え込むという。天気もいいし気温も低いという今週末は理想的なタイミングだ。

・登山口となる石徹白は遠く、長野から道のりで約250kmある。大半が一般道で、しかも現在は国道19号線が旧信州新町で地滑りのため通行止めで迂回する必要があり時間がさらにかかる。睡眠時間確保のため飛騨清美ICから高鷲ICまで高速を利用しても片道4時間半かかった。石徹白川にかかる橋のたもとに駐車して仮眠。この日は久しぶりに冷え込んで安房トンネル付近で-4℃、石徹白でも到着時に-2℃まで下がっていた。

・翌朝はまだ暗い時刻に出発。雪が締まった早朝の時間帯に距離を伸ばしたいためだ。冬装備は少し悩んだが、念には念を入れて軽ピッケル、10本爪アイゼン、ワカンとした。先週はワカンの出番は無かったがそれはずっと雲に覆われて気温が上がらなかったからで、今日は1日好天が予想され気温は低めとはいえ日中は雪が緩むだろうと予想してワカンを持つことにした。しかし実際には日中でもワカンが不要なほどに雪が締まって歩きやすかった。

・雪解けは先週より着実に進んで林道に先週あった雪が消えてしまった箇所も。林道で雪の上を歩く必要のある区間は廃林道を含めて1割程度しかなかった。雪が残っていても林道の端は雪が消えて歩ける場所が多く、おかげで林道歩きは楽だった。

・往路は気温が-8℃と低く、林道の雪は固く締まって全く沈まない。おそらく昨日のものと思われる足跡はあったが今朝先行している登山者の足跡は雪の上には残らない。しかし雪から舗装道路の上に乗った直後は僅かに靴底に付いた砕けた雪が路面に残り、どうやら先行者は2名らしいことが分かった。この2名とも白山登山口で銚子ヶ峰方面に登っていた。

・先週下ってきた初河谷の林道を通過し白山登山口到着。往路の林道歩きの2/3は終わったかな。通常は大型連休直前にここまで車で入れるようになるとのこと。約2週間後だが、その頃には稜線上の藪がかなり出てしまっているだろう。マイカーで入れなくてもこの時期に林道を歩いてでも入山するのは無駄ではない。いや、藪を回避できるメリットの方がずっと重要だろう。

・登山口より先は廃林道化しているが大きな崩壊や藪は無く普通に歩ける。雪の上には古い足跡があり、途中からスキー跡に変わっていた。おそらく昨日から数日以内の跡であろう。スキー跡からして下ってきたものと推定された。

・標高1090mで問題の橋が登場。入口は雪で寝た灌木が邪魔しているが若干の欄干の破損があるのみでしっかりとした構造が残っていて安心して渡れる。ここまで石徹白川を遡上してもまだ流れは太く、この橋が無ければ対岸に渡るのは不可能だろう。

・橋を渡った対岸は林道の形跡は皆無で直接沢の流れが洗っていた。左右どちらも水の流れがあるが、右側(左岸)は木の枝がうまい具合に寝ていて流れを渡ることができた。地形図では左岸側は尾根が張り出して崖マークがあるので流れが崖まで迫って岸辺をへつれない場所がありそうなので本当は避けたかったが、水量が多くて右岸側への渡渉は飛び石を使っても不可能だった。そもそも今の時間帯は飛び石にかかったしぶきが凍結して石の表面は氷でコーティングされていて使えない。

・仕方がないのでこのまま左岸側を遡上することにした。幸いにして高巻が必要な場所は無かったが、一か所だけ流れのすぐ近くまで迫った急な雪面をトラバースする箇所があり、ここだけのためにアイゼンとピッケルを出した。そして面倒なのでその後もアイゼンを履いたまま歩いた。

・標高1150m付近の最初の大きな支流はスノーブリッジは無く流れが完全に出ていたが、流れは比較的細く、乾いた飛び石で渡渉に成功。しかしその先の左岸は流れが岸に接して沢沿いに伝わるのは難しく、一段上がった台地状の平坦地を上流方向へと進んでいく。既に斜面の雪はたっぷりとあり、沢の周辺以外では地面はほぼ見えなくなっていた。先週とは残雪の量が大きく異なる。

・次の沢も流れが出ていて、前回の沢よりも少し流れが太いので飛び石の選択に時間がかかったが、乾いた飛び石で対岸へ出ることができた。実はこの流れがよも太郎山〜願教寺山鞍部へ繋がる沢だったのだが、地図はポケットにしまったままで読図していなかったのでそれが分らなかった。ただし、頻繁に進行方向はチェックしていたので、標高1190m付近で沢の方向が南西に変わったところでミスに気付いた。このまま進んでしまうと薙刀山北方の1490m鞍部に出てしまう。この頃になるとまだスノーブリッジは無かったが沢の流れはぐっと細くなり、飛び石で右岸へ渡れそうであった。

・目的の沢は北側の尾根の向こう側なので進路変更。尾根南側は少し地面が見えているが雪に覆われた面の方が広く、藪に遭遇することなく尾根を登って反対側の谷へ。トラバースして高度を落とさないように進んで谷地形へ。こちらの谷は流れも見えず一面の銀世界。これなら苦労せず鞍部に達することができるだろう。

・このまま本流を遡るとよも太郎山〜願教寺山鞍部に出るのだろうが、効率よく周回するためによも太郎山南側鞍部へ出る必要がある。ここでまた手抜きしてしまい、地形図を確認しないまま左の適当な太い尾根を登ればよも太郎山へ直接出るのだろうと思い込み、立木のない広大な斜面の尾根を登ることにした。しかしその途中で念のために地形を広げて確認したら、このまま登ったらよも太郎山南側の1669m峰に登ってしまうことが発覚。目的の1510m鞍部へは尾根を2つ越えないといけないが、ほとんど藪が出ている場所は見えないし、雪は良く締まって歩きやすいので大きな問題にはならないだろう。ただし、平らな谷底ではなく斜面を歩くので足にかかる負担は増加して余計な体力を消耗するが。北斜面はまだ日が当たらず固く締まった雪で、今回使った軽い10本爪アイゼンではグリップが不足して滑ることあり。マジな12本爪を持っているがこいつは重くて本格的にヤバいと予想されるルートでしか持っていく気がしないのであった。

・最初の尾根は直上のみ僅かに根曲り竹が顔を出していたが幅は1mにも満たない。そのままトラバースを続けて次の尾根は雪に覆われて藪は皆無。その先の谷が目的の1510m鞍部へ続く谷だった。この谷はスキー向きでほとんど立木が見られない。傾斜は緩やかで初心者でも滑れそうだった。ただし見上げるよも太郎山は急な登りである。

・面倒なので1510m鞍部まで西へ進むことなく谷を横断してよも太郎山への登りにかかる。それなりに急だがアイゼンが良く効くので安心して登れる。上空は雲一つない快晴で、真っ白な雪稜のバックは真っ青な空。今年初めて見る光景だ。ここに来て日焼け止めを忘れたことが発覚。今は太陽を背にしているので顔の日焼けはあまり無いと思うが、よも太郎山から先は太陽の光を受けながらになるので日焼けが心配だ。先週準備した帽子があるので顔に直射日光は当たらないが、雪の反射だけでも結構焼けるのは過去の経験で実証済み。実際、この夜から日焼けで顔が痛かった。特に鼻の穴が一番痛かったのが(笑)、下からの照り返しが原因であることを如実に物語っていた。

・立木皆無の広く急な雪面を登り切ると県境稜線に乗り、よも太郎山山頂が僅かに先に見えていた。県境稜線にも立木は皆無で山スキー向きの植生だった。稜線西側直下はもう根曲がり竹が盛大に顔を出しており、やはり東斜面の方が残雪量は格段に多かった。南を見ると1669m峰。太郎山よりも標高が高く堂々とした姿だが名前は無い。尾根直上から西斜面は根曲り竹が出ているが、尾根東側には雪庇残骸が続いていて今ならほぼ藪漕ぎ無しで登れそうだ。

・平坦な尾根を進んで僅かに登った雪庇残骸と思われる土手状の雪の盛り上がった筋のてっぺんがよも太郎山山頂だった。立木皆無で山頂標識や目印を取り付ける物体が無いので人工物は皆無。よって360度の大展望が広がる。先週はずっとガスの中で五里霧中の言葉がぴったりであったが、今週はその鬱憤を晴らすような快晴! 先週歩いた丸山〜初河山の尾根も良く見えていた。尾根を北側から見ているので雪が多く残っているように見えるが、実際には藪が多く出ているのは実際に歩いた私しか知らないことだ。北に目を向けると30年近く前に登った経ヶ岳、未踏の大長山や赤兎山が見えていた。北東方面が白山だがここからでは三ノ峰が大きすぎて目立たない存在だ。その東は別山〜日照岳へと続く尾根。ずっと手前、目の前が願教寺山で山頂直下左側のガレが壮絶だ。しかし県境はガレの右側縁で、さらに右側に残雪がつながっているのが見えるので、そこを登るのが良さそうだ。その右手にはいくつかの瘤を従えた平たい銚子ヶ峰が見えているがまだまだ遠い。

・あまり強くはないが冷たい北寄りの風が吹いているので南側で休憩。長丁場のコースのまだ半分にも達していないだろうが、既に累積標高差の2/3程度は登っただろう。労力的には残りは半分以下かな。計画通りに林道から直接よも太郎山へ登ることができ、時間は余裕があるのでのんびり休んで体力を回復できる。

・軽く飯を食ってから出発。1450m鞍部まで下り一辺倒だが、途中に雪が切れて根曲り竹の緑を突っ切る必要のある区間が見えている。幸い、上から見下ろすとルート全体の様子が把握できるので、無駄のない最短コースで藪を突っ切れるのがありがたい。ちなみに県境稜線に達してからも足跡は見当たらなかった。実際にはここ1週間で歩いている人がいるはずだが、日中の雪解けで足跡が消えてしまうのであろう。

・標高1550m付近で下り方向にまだ半分寝ている根曲り竹の藪を20m程度突っ切る。かなりの密度であり、これでは無雪期登山は無謀だろう。林道が開通する2週間の間にどれだけこの藪が広がってしまうだろうか。

・1450m鞍部付近はブナではなくダケカンバ登場。立木を見るのは久しぶり。それほど県境稜線には立木が無い。1450m鞍部より先は県境稜線は雪が消えている区間が長く、右手に細長く伸びた残雪の筋を登って行く。ここからだとその裏側、つまり枝尾根の南斜面の様子は見えないが、よも太郎山の登りで残雪状況はよく観察して雪が残っているのを確認している。残雪の筋の先端から僅かな藪漕ぎでそこに出ることができ、最短で藪を抜けることができる。これが願教寺山方向からでは見えず、無駄に長い藪漕ぎとなる確率が高いだろう。

・最低鞍部付近から願教寺山からこちらへ下ってくる人の姿を発見。おそらく銚子ヶ峰〜野伏ヶ岳へと周回する登山者であろう。出会う場所が藪の中でなければ顔を見ることができるかな。

・狭まった残雪の先端から2回ほど短い根曲り竹の藪を漕いで枝尾根南側の広い残雪帯に飛び出す。これでしばらくは藪漕ぎは無いが、尾根直上は根曲り竹の藪が広範囲に出ているので右手の雪が付いた急斜面を登っていく。

・鞍部付近で見えていた登山者とは雪がある場所ですれ違ったのでお互いの顔を会わせることができた。どうも私より先に出発したようで、それでも既に2人が先行していて、さらにバイクでやってきた登山者に追い越されたとのこと。ということは林道歩きの段階で私の先に4人いたようだ。ロングルートなので日の出よりずっと前から歩き始めているようだ。私もそうしたいが睡眠時間を考えると5時前がいいところだろう。

・出会ったのは60歳前後の単独の男性で、予想通り野伏ヶ岳まで周回とのこと。両手にはストックでピッケルはザックの横に。ワカンは持っていないようだが今の状況ではそれが正解かな。ヤマップに登録しているとのことで帰宅後の翌日に見てみたら早速記録が出ていた(ユーザー名は戸隠剣)。しばし立ち話して分かれた。

・先人の足跡を追って急な雪面をジグザグに登り、標高1660m付近で10〜20mの短い根曲り竹の藪を突破すれば山頂まで広い雪が続く。ここからでは稜線北側の壮絶なガレ地帯は全く見えない。

・傾斜が緩むと願教寺山の広い山頂部に到着。ここもよも太郎山同様に立木皆無で一面の雪原が広がり、展望を遮るものは何もない。ここまで来るとよも太郎山南側の1669m峰以南の薙刀山や野伏ヶ岳も見えるようになるが、薙刀山は野伏ヶ岳と重なって判別が難しい。そろそろ野伏ヶ岳は賑わっている時刻かな。

・すれ違った男性は1450m鞍部を越えてよも太郎山の登りにかかっていた。反対側の銚子ヶ峰方面からこちらに向かっている人影を発見。この人も顔を見ることができるだろうか。この分では願教寺山と1670m峰の間で尾根が屈曲する標高1650m付近ですれ違いそうだが、その周辺はこれまでと違って長い距離で尾根上の藪が出ていて、左右にお手軽に迂回できる残雪が見当たらない。藪の状態にもよるが、雪を求めて大きく迂回するよりは尾根直上で素直に藪を漕いだ方が楽かもしれない。

・願教寺山では休憩なしで出発。次の休みは銚子ヶ峰山頂の予定だ。1650m小鞍部までは快適な残雪の尾根を下るが、山頂から見た通りにこの小鞍部で雪が落ちて藪に突入。残念ながら尾根の両側とも手軽に藪を迂回できるような近さで連続した残雪は無いので、尾根直上を進むのが正解であった。植生は根曲り竹ではなく胸程度の高さの笹が主体で、利根水源山脈の上越国境と似た植生であり、漕ぐのは比較的楽であった。

・尾根が左に屈曲してなおも笹尾根を進み、尾根南側の残雪が接近した地点で尾根を離れて雪の上へ。ここで登山者の姿があると思ったら無い。もしかしたら鞍部付近で休憩しているのかと思ったが、登りにかかっても人の姿は無かった。振り返るとその登山者は尾根の北側を巻いていて、残念ながら私とは尾根の反対側ですれ違っていた。願教寺山山頂から見れば尾根の北側は残雪が少なく巻くメリットが無いのが一目でわかるが、おそらく東側からだと尾根の裏側になって残雪状況が見えないのであろう。話ができなくて残念。

・この先はずっと残雪の稜線が続いて藪に突っ込むことは無かった。1670m峰も立木皆無の大展望場所。山頂部は平坦で近場は雪原に隠れて見えないが、気配としてはどうやら銚子ヶ峰までもう藪は無さそうだ。実際にピークの下りにかかると先の稜線の様子が見えるが藪が出ている箇所は無かった。

・小さな存在で目立たない1615m峰から先は矮小なシラビソが登場。ここまでシラビソは全く見なかったので最初は景色に違和感を感じたが、原因がシラビソだと気付くのに時間がかかった。このエリアではこの標高以下ではシラビソはまだ登場しないようだ。これまで登った野伏ヶ岳、薙刀山、芦倉山、丸山でシラビソを見たのは丸山山頂周辺くらいかな。

・1615m峰を越えると尾根幅が広がり広大な斜面が銚子ヶ峰〜別山へ続く稜線へとつながっている。県境稜線はこの斜面の左端(北端)だが、わざわざ遠回りしても歩きやすくなるわけでもなく、このまま直線的に登った方が銚子ヶ峰に近い位置で主稜線に出ることができるのでまっすぐ登ることに。先人の足跡は県境稜線らしく周囲に見当たらない。僅かなシラビソが生えるだけでスキー向きの斜面だ。

・このまま登ると県境より南で主稜線に出るが、銚子ヶ峰までの間には1784m峰と1800m峰の2つのピークがあり、どうせならこれらを巻いてしまうことにした。1784m峰の西斜面下部は残雪が横にも延びて1800m峰と銚子ヶ峰間の1770m鞍部へ繋がっているのが見える。1700m鞍部付近の平原で横移動開始。1770m鞍部へ繋がる谷筋にはスキー跡があり、結構な傾斜でジグザグに登っていく。

・傾斜が緩んで尾根に出ると僅かながら夏道が顔を出していたが、大部分はまだ雪の下だ。今日すれ違った2名の先人の足跡は皆無。彼らが通過した時刻はまだ気温が低く雪が締まって足跡が残らなかったのであろう。今の雪の沈みは数cm程度で足跡が残るが、日が高い時刻でこれほどしか沈まないのでは担いできたワカンの出番が無い。まあ、その方がいいのだが。

・目の前のピークが銚子ヶ峰山頂かと思ったら山頂北側の1800m肩で、本物はその先にあった。雪が消えた夏道ではなく残雪を伝って西側から回り込むように銚子ヶ峰山頂へ立つ。残念ながら三角点は雪の下だったが、山頂北側は雪が消えて低い笹が出ていたので休憩に丁度いい。山頂の植生が根曲がり竹ではなく背の低い笹というのは意外であった。ここも立木は皆無で邪魔するものが無い360度の大展望。やはり目が行くのは先週登った丸山や芦倉山。こちらから見ると芦倉山と初河山が重なっているが芦倉山の方が高い。丸山から1659m峰、初河山にかけては尾根直上付近の雪はかなり少ないような。でも考えてみたらあの区間のほとんどは尾根南側直下の雪庇残骸を歩いたような。北側から見ると元々雪が少ないように見えるのかもしれない。

・東を見ると霞んではいるが木曾御嶽、乗鞍岳、槍穂の白い姿が確認できた。ただし槍穂は山域としては見えるのだが各ピークは肉眼でははっきり見えず、帰宅後に写真で確認して判別できる程度だった。手前の尾根の僅かな鞍部にも白い山々が見えたが現地では同定できず、帰ってから写真を拡大したら薬師岳と立山の形状と判明。展望シミュレーターでチェックしたら正解だった。

・笹の上に荷物を広げて北寄りの冷たい風を避けながら休憩。誰か登ってくるかと思ったが休憩中にやってくる人はいなかったし、林道起点まで歩く間にも出会った人は皆無。駐車場の車のほとんどが野伏ヶ岳が目的だったようだ。

・休憩を終えて下山開始。この先は大きな登りは無いので楽だろう。それに夏道があるルートなので下部で雪が消えていても藪漕ぎの心配が無いのがありがたい。先人の足跡はほぼ残っていないし、大半の夏道は雪に覆われて見えないので尾根を外さないよう要所で読図しながら下って行く。比較的新しいスキー跡が途中までルート上にあったが、1600m肩付近で夏道のある尾根を外して斜面を下っていったようで消えていた。もしかしたら往路の廃林道で見たスキー跡の主かもしれない。

・1748m峰の下りは比較的傾斜が急で靴底を滑らせてグリセードで下った。朝の雪が締まった時間帯ではできない芸当だ。ここからは右手の尾根上に茶色い建物が見え、避難小屋らしい。

・標高1600m肩で丸山へと続く主稜線を離れて右に緩やかに下る尾根に入るが、雪に埋もれて夏道は見えないし判別可能な足跡や目印が無いので夏道があるはずなのに読図して間違いないか確認が必要だった。銚子ヶ峰〜1748m峰の間では部分的に夏道が出ている場所もあったが、その後は標高1480m付近で傾斜が急になるまではほとんど地面は見えなかった。体力を消耗する登りと違って下りの場合は雪の上の方が膝にやさしいので、残雪があるのは有り難い。

・地形図通り標高1570m付近で避難小屋が登場。小屋周囲の雪は少なく出入りは問題なし。ただし入口には「使用禁止 積雪前なら雪囲いをどかして入って下さい」と書かれた表示あり。積雪後は使ってはダメなのか? 雪囲いするくらいなので真冬には小屋が埋もれるほど積雪があるのだろうが、今は小屋周囲の積雪は1mもないであろう。

・これ以後も緩やかな尾根を下っていくが、相変わらず残雪で夏道が見えない場所が大半で、尾根の分岐では地形図を出して方位磁石で方位を確認して正しい尾根を下るように注意する。先週の五里霧中の下りと違って先の見通しがあるので読図が楽だ。それに尾根の傾斜が緩いせいか、初河山南西尾根より残雪が格段に多い。何だかんだで登山口まで雪の上を歩くことが多かった。逆に雪が消えた地面を歩くときには雪解け水で土が湿って滑りやすいので注意が必要だった。見た目では乾いた枯葉で覆われているのだが。

・標高990小鞍部付近に杉の巨木が登場。西方向から見ると枯れ枝が目立ち、中央部の緑が少なく高さも低いが幹の太さはかなりなもの。ネットの生地によると幹回りは約14mとのこと地形図にも「特別天然記念物 石徹白のスギ」として掲載されている。ちなみに屋久島の縄文杉が約16mなので日本有数の太さと言っていいだろう。

・大杉より下部は石畳の道に変わるが、ここも大半が雪に埋もれて夏道がどこにあるのか分らないほど。大杉前で地形図を開いて道がどちらに下っているのか確認する羽目になるとは思わなかった。周囲はまだ残雪が多いので夏道から外れても藪漕ぎにはならないと思うが、足跡がはっきり残るのであまり変なルートを下ると他の人をそちらへ引き込んでしまう可能性がある。部分的に表れた夏道をできるだけ正確になぞって下った。

・無事に白山登山口の林道に到着。往路では気付かなかったがここにはパイプで水が引かれていた。今日は好天ということもあり喉が渇いたので丁度良かった。さすがに長時間の行動で足に疲労が溜まり、このまま長い林道歩きを続けるのは厳しいので暖かい舗装道路の上にひっくり返って休憩。少し風があるが日差しがあるので寒くない。最後の食事にパンをかじったが、思ったより腹が減らず食料が余ってしまった。こんなことは滅多にないのだが。

・最後は長い林道歩き。でもほとんどが舗装道路を歩けるので疲労は最低限で済む。帰りでも林道上で出会った人は皆無。林道の雪の上に残った足跡からして雪が緩んだ日中に下山した人はいないようだ。先週はたくさんあったのだが。

・地形図で読図しながら林道を歩いて残距離を把握したのでゴール地点の到着予想時刻が判明していたのは珍しい事態。私の場合、林道歩きでは読図しないのが普通なので現在位置が分からず、残りの距離も所要時間も分らないで歩いている。やはり現在位置が分かるのは精神的にいいことだ。まあ、分かっても労力が減るわけではないが。

・車止めの横を抜けて橋の袂の駐車余地へ。橋へ降りる道路の入口にはバイク利用の登山者が下山した直後で片付け中。願教寺山の登りですれ違った男性が、バイクでやってきた人に追い越されたと言っていたのでこの人のことだろう。どこまで行ったのだろうと思ってネットで検索してみたらヤマップのユーザーで、夜中2時過ぎに出発して銚子ヶ峰を越えて三ノ峰まで登り、戻って県境稜線を薙刀山まで縦走して野伏ヶ岳は巻いた強者であった。野伏ヶ岳に登らなかったのは、おそらく既に登ったことがあるからであろう。

・橋付近の駐車場の車は合計10台弱程度だが、登山者の多くはここではなく神社前の舗装された駐車場を利用するので、野伏ヶ岳への入山者はずっと多かっただろう。それにもう下山した人もたくさんいるだろう。車内で着替えて残りの飯を食ってから帰り道へ。今回は2日分の体力を使ったのでもうおなか一杯、明日は自宅でのんびり過ごして疲労回復に努めよう。


まとめ

 今回のルートは先週とは比較にならないくらい残雪が多く、ほとんど藪漕ぎせずに済んだ。斜面の向きが東で傾斜も緩い地形が幸いしたのだろう。どうやら県境稜線の方が先に藪が出てしまいそうで、よも太郎山への登りで使った谷筋のルートの方が遅くまで雪が残りそうな気配。このルートを使えば銚子ヶ峰〜野伏ヶ岳間の周回ルートを半分に分けることが可能で、どうしても日帰りでやりたいが体力的に無理と感じる場合は、私の往路のルートが使えるだろう。ただし、橋を渡った先の木が流されなければの話だが。これが無いと左岸に渡るのは難しい。右岸側は水量が多くて渡るのは不可能。

 ネットで調べると願教寺山は林道が開通する大型連休にも登られるようだが、林道を歩いてでも4月中旬以前に登った方が大幅に藪を回避できるのでお得だろう。

 

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